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流れ星TOP 2006/8/28 第44号
冥王星がなくなるわけではありません
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 今夜はどんな星空が見えるでしょう。。。

     ☆彡 流 れ 星 か ら の 贈 り 物 ★彡

        第44号 2006年8月28日発行
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こんにちは。
「流れ星」の鈴木です。

引き続き、ご愛読いただいている方々はもちろんのこと、
新しく読者登録していただいた皆さん、
本当にありがとうございます。


昨日27日の、金星と土星の超接近。
私の住んでいるところでは、
週末からの雲がとれずに、残念ながら観ることができませんでした。


ところで。。。

国際天文学連合(IAU)の総会で今月16日に提出された
「太陽系の惑星の定義」の原案については、その決議結果によっては
「惑星の数が12個になるかも」と大きな波紋を広げました。

その後、1週間にわたる議論の中で、原案に対する異論が続出、
国際天文学連合は定義の修正を余儀なくされました。

苦渋の中で導き出された最終案では、
惑星の分類から冥王星が外されることになり、
迎えた24日の決議によって賛成多数で可決されるに至りました。



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 ☆今週の話題
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 ☆1.国際天文学連合の総会で決まったことは?

 ☆2.編集後記



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 ☆1.国際天文学連合の総会で決まったことは?
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そういえば、2月に配送した第16号で、
冥王星の発見伝について少しご紹介したことありましたね。
http://nagarebosi-kirari.com/mailmaga/20060213.html


その時には、まさか半年後に、
天文学を揺さぶる、これほど大きな出来事があろうとは、
さすがに予想していませんでした。。。


さてさて。

今回の国際天文学連合の総会で決まったことは、
「冥王星を惑星の分類から外す」というもの(だけ)ではありません。

総会決議では、
衛星を除く太陽系の天体について、
次の3つのカテゴリに分類することを決めました。

 1.惑星
  a)太陽の周りを回る。
  b)じゅうぶん大きな質量を持ち、自己重力によりほとんど球状である。
  c)その軌道の近くで他の天体を掃き散らしている天体である。
    (その軌道近くで圧倒的な大きさの天体である。)

 2.dwarf planet(矮惑星 矮小惑星)
  a)太陽の周りを回る。
  b)じゅうぶん大きな質量を持ち、自己重力によりほとんど球状である。
  c)その軌道の近くで他の天体を掃き散らしていない天体である。
    (その軌道近くで圧倒的な大きさの天体ではない。)
  d)衛星ではない天体である。

 3.Small Solar System Bodies(太陽系小天体)
  a)太陽の周りを公転する。
  b)衛星を除く、上記1と2以外の他のすべての天体。


従いまして、言い方によっては、
「冥王星を惑星から外す」という決議をしたわけではなく、
これら3つのカテゴリを明確にした結果として、
冥王星は、「惑星」ではなく
「dwarf planet」と認識することになったということです。

当たり前ですけど、
冥王星がなくなるわけではありませんし、
当の冥王星にしてみれば、
「そんなのなんだっていいよ」ってな感じかもしれません。

冥王星という名前自体も特に変更はないと思われます。

ちなみに。。。
「冥王星」という名前は、
英名であるPlutoが命名されてすぐに、
日本の天文民俗学者である野尻抱影が、
「科学画報」の1930年(昭和5年)10月号にて、
「冥王星」か「幽王星」という名前を提案したことによります。
なので、天王星や海王星は中国語起源なのに対して、
冥王星は、もともと日本語ということになります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060825-04665775-jijp-soci.view-001


冥王星の件もインパクトはありますけど、この決議によって、
それと同等、もしくはそれ以上のインパクトになることというと、
火星と木星の間でまわっている小惑星について、
その「小惑星(minor planet)」という
カテゴリの呼び方自体がなくなることが挙げられます。

小惑星や彗星などは今後、
3番目の「Small Solar System Bodies」に
分類されることになるわけです。

ただし、セレスや2003UB313については、
その大きさなどから、
冥王星とともに「dwarf planet」に分類されます。


註:「dwarf planet」や
  「Small Solar System Bodies」の
  正式な日本語訳については今後検討されるとのことです。
  補足ですけど、dwarf(ドワーフ)とは本来、
  ファンタジーや伝説、神話に登場する「小びと」のこと。
  科学分野では矮小体(わいしょうたい)のことを指します。


これまでの太陽系、
原案の太陽系(セレス・カロン・2003UB313が加わった太陽系)、
決議後の太陽系(冥王星が外れた太陽系)
のそれぞれの様子はこんな感じです。
http://nagarebosi-kirari.com/mailmaga/20060828.html#01


なお、国立天文台の公式サイトで、
この新定義を踏まえた「惑星の定義」について、
非常に分かりやすいQ&Aが載っていますので、
一読されると、今回の決議の要点がお分かりいただけます。
http://www.nao.ac.jp/QA/faq/a0508.html



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 ☆2.編集後記
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今回の「太陽系の惑星の定義」に端を発した騒動?については、
これまで「当たり前」であったことに対する影響という点で、
「心情面の揺さぶり」を感じた人も多かったのではないでしょうか。

アメリカの天文学者クロイド・トンボーが冥王星を発見したこともあり、
最後まで、多くのアメリカの天文学者はこの議案に反対したということも、
それの顕著な表れの1つではないかと感じます。

科学とはいえ、
それを扱っているのが人間である限り、
時と場合によって政治的な色合いが
滲んできてしまうことも致し方ないことなのでしょうか。。。


冥王星は、その大きさが小さいことや、
その軌道が他の惑星と大きく異なっていることなどから、
「そもそも惑星なのか?」という議論が続いていました。

今回は、その議論に対して、答えを先送りすることなく、
明確な結論が出されたということであり、
また、その結論についても、私は指示できるものと考えています。


ただ、この騒動について、特に報道面で気になったことが1つ。

冥王星が惑星ではなくなることについて、
「降格」や「格下げ」といった表現が一部で使われていますけど、
それはちょっと違うんではないか、ということです。

この決議によって、太陽系の天体は、衛星を除いて、
上述の3つのカテゴリに分類されることになりました。

これは、各天体の定義を決めただけであって、
それぞれのカテゴリに上下関係などありません。

定義がはっきりしたことによって、
冥王星は「dwarf planet」というカテゴリに入っただけであり、
惑星のカテゴリから降格したわけでも、格下げしたわけでもありません。

「降格」や「格下げ」といった不適切な言葉では、
不必要に、私たちの負の心理を煽ってしまいかねません。

確かに報道としては使いやすい言葉ではあったのでしょうけど、
もう少し考えて欲しかったと思う次第です。


次回は、9月8日に起こる部分月食についてご紹介します。


それでは、また来週にお会いしましょう☆彡



「太陽系の惑星の定義」について、
経緯も含めて詳しくお知りになりたい方は下記を参照してみて下さい。

「惑星」の定義の原案、公開へ
http://www.astroarts.co.jp/news/2006/08/16planet_definition/

【特集・太陽系再編】(1)太陽系の外へ広がる影響
http://www.astroarts.co.jp/news/2006/08/17planet_1/

【特集・太陽系再編】(2)惑星は増え続けるか
http://www.astroarts.co.jp/news/2006/08/19planet_2/

【特集・太陽系再編】(3)「小惑星」が消える
http://www.astroarts.co.jp/news/2006/08/21planet_3/

【特集・太陽系再編】(4)守られるか、冥王星の地位(前編)
http://www.astroarts.co.jp/news/2006/08/23planet_4/

【特集・太陽系再編】(4)守られるか、冥王星の地位(後編)
http://www.astroarts.co.jp/news/2006/08/23planet_4_sequel/

【速報】太陽系の惑星の定義確定
http://www.astroarts.co.jp/news/2006/08/25planet_definition_flash/



なお、このメルマガの全バックナンバーはこちらにご用意しております。
http://nagarebosi-kirari.com/index1-6.html





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これまでの太陽系です。
冥王星の軌道が、
他の惑星の軌道と違って、
楕円で傾いていることがよく分かります。

各惑星の位置は2006年8月28日のものです。
以下同様です。



2006年8月16日に国際天文学連合総会で提出された原案による太陽系です。
冥王星の外側に、2003UB313が回っています。
その軌道の楕円具合と傾きは冥王星を超えています。
カロンは、冥王星とほぼ同じ軌道となります。


クローズアップしてみると、
火星と木星の間にセレスがいることが分かります。
(惑星の大きさは実際のものよりも大きく表示しています。)



24日の決議後の太陽系です。
冥王星が外れたことにより、
いちばん外側をまわるのは海王星となりました。
8個の惑星は、ほぼ同じ軌道面であることが分かります。


少しクローズアップしてみました。
(惑星の大きさは実際のものよりも大きく表示しています。)




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